--> 裏表紙よりあらすじ 応仁の乱から三十年。 世はまさに乱世。 中国地方もまた、山口に大内義興(おおうちよしあき)が前将軍足利義尹(あしかがよしただ)を擁して上洛をねらい、出雲には老虎尼子経久(あまこつねひさ)が牙を光らせていた。 その二大勢力の間に揺れる小国安芸の毛利家に生まれた元就。 かりそめの平和は父弘元の死で終止符を打たれた。 十歳のみなし児城主の運命は‥‥‥。
--> ここが読みどころ 「百万一心」 万人が一つの理想、一つの光を仰いで団結していく・・・。 時代は下克上戦国時代の真っ只中、山陽の大内、山陰の尼子に挟まれながら、兄・興元、その嗣子・幸若丸と当主を続けて失った弱小毛利家はいつ分裂してもおかしくない状態だった。 しかし、分裂の危機があるごとに元就は鮮やかに家中をまとめていく。
毛利元就は軍略・謀略に優れた知将として有名であるが、本書では幕末・明治維新に至るまで脈々と受け継がれていく毛利家の結束力の固さを植え付けた元就の人柄に多く触れている。 また、毛利氏は楠木正成に軍略を授けた大江氏の末裔とのことで、正成を陰から支えた成田小三郎の子孫・小五郎も同じく元就を助けている。 いずれも勤皇つながりで山岡氏好みの人物である。 その小五郎が堺の間者・於仙とともに大内氏の内部から元就を援護し、やがて大内家を内から崩壊させる。
氏の作品ではよくあることだが、為政者よりもそれを助ける陰の人物のほうが恐ろしいまでの才能と実力を持っており、「徳川家康」においてはあの信長でさえも竹之内波太郎によれば飾りにすぎなかった。 これまで多くの政治の裏表と接してきた山岡氏らしい見方である。
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